About Feature Insight Talk Perspective And Meisters

「家づくりは最高に面白い!」
そんな想いを伝えたいとスタートした家づくりの奥深さ、
楽しさを知る者たちによるクロスオーバートーク。
既成概念を突破するという視点が空間の可能性を広げていく。

既成概念の突破から始まる設計

Crossover Talk #02 藤本誠生×小泉雅裕 Feature|Sept.2021

建築家 藤本誠生 写真建築家 藤本誠生 写真
藤本誠生(ふじもと・せいしょう)/1979年熊本県生まれ。2002年に森繁建築研究所後、2012年に矢橋徹建築設計事務所に入所。その後2015年に藤本誠生建築設計事務所を設立。使われ続ける建築をつくること。可能性のある建築を考え続けること。1つの建築が連鎖し、街・都市・思考が共鳴していくことを指標にしている。
小泉雅裕 写真小泉雅裕 写真
小泉雅裕(こいずみ・まさひろ)/1976年静岡県生まれ。平成15年26歳で大工として独立し、小泉建築を設立。数多くの一般木造建築の棟梁として年間約20棟の家を手がけ、2007年小泉建築から今の株式会社住宅工房コイズミを設立。その後大工集団の会社から工務店に。大工で培った技術をもとに現場の管理をし、強くて、美しく、精度の高い建築を提供している。

建築家が発想するコンセプトは
どこから生まれてくるのか?

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君島「多彩なフレームを持つ家」の発想の起点とは何ですか?

藤本「既成概念の突破から始める設計」です。

君島既成概念の突破とは具体的にどのようなことでしょうか?

藤本中と外の空間の連続性をつくり出し、外の土間から玄関土間、そして居住空間との中間領域を楽しむことをコンセプトとしました。そのためには、「LDKという既成概念」を突破し、リビングとダイニングとキッチンの中から何かを抜くと新しい空間が生み出されるのではないか?そんな思いを起点に設計が始まりました。これが多彩なフレームを持つ家の出発点です。

小泉中間領域が暮らしのバリエーションや楽しさを数多く生み出すことを私たちも知っています。中間領域は時として建築家が想定しない住み方を住まい手が発想することがあります。建築会社である私たちは、点検などでユーザー様を訪問することがありますので、建築に対する新しい発想と気づきを得ることができるんです。

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君島多くの住まいを見てきている私たちでも、LDKは住まいにとって必ず必要なものだと思っています。それが既成概念なんですね。

藤本設計者としては、住み手に多彩な暮らしの選択肢を持ってもらいたいと思っています。間取りをLDKと定義をしてしまうと、リビング(L)ではテレビを見て、ダイニング(D)では食事をし、キッチン(K)では料理を作る。当たり前のことに聞こえますが、この当たり前のことが住まい手の選択肢を奪ってしまっている気がします。今回のモデルハウスでは、その当たり前のことに疑問を持ち、新たな発想を住まい手に提案することに挑戦しました。

小泉新たな発想を持って住まい手に提案することは、私たちの建築思想を豊かにし、多くの豊かな暮らしの提供を可能にします。既成概念の突破は、実際にモノづくりをする建築会社にも求められることです。様々な建築家との数多くの経験が私たちの強みなんです。

LDKの中から何かを無くすと
新しい発想が生まれてくる

君島確かに私たちは住まい方の型にはまっているような気がしますね。では実際には、LDKの中から何を抜いたんでしょうか?

藤本リビング(L)を抜きました(笑)

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君島リビングを抜くという発想はかなり大胆ですね。小泉さんは、今回のコンセプトを聞いてどのように思いましたか?

小泉リビングのない間取りというのは我々建築に携わる者にとっても経験しない提案でした。我々としても新たな発想をお客様に提案したいという気持ちがありましたので、藤本さんの感性に共感しようと思いました。固定的なリビングを無くしたということで、家中がリビングになるという考え方になります。

家族といっても、暮らし方はぞれぞれです。旦那様は、玄関前のポーチスペースでお酒を飲むのが楽しくなるかもしれませんし、奥様はカウンターテーブルでフラワーアレンジメントなどの手芸を楽しんだり、子供たちは土間スペースで中の遊びや外の遊びを自由自在に楽しんだりもするのではないか。住まい手が、住んでいくうちにどんどん楽しみを増やし、フレームを多様化させていくんです。

多彩なフレームは
多彩な住み方につながっていく

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藤本それぞれの空間から見える景色が暮らし方につながっていきます。その見える景色を「フレーム」と呼んでいます。多彩なフレームは、多彩な住み方につながり豊かな暮らしのバリエーションが増えていくと思っています。リビングをつくるのではなく、ダイニングをつくるのでもなく、ただ「居場所」をつくる。住み手の顔を見て、だれがどのタイミングでどこに居てどんな会話を知っているのだろう。それを想像しつづけることでしか出てこない回答があります。

小泉実際にその空間に身を置き、様々な空間からフレームを感じることで藤本さんの意図がどんどんわかってくる。この空間で何をしようとか、誰と語らおうとか、誰とこの時間を共有しようとか、いろいろと発想が湧いてきて楽しい。お客様をご案内する度に、また新たな発想も生まれ、モデルハウスの案内もどんどん楽しくなったりしています。既成概念の突破中って感じです(笑)

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藤本設計者としては、小泉さんがそのように感じてくれていることが嬉しい。最初は、この家ってどうやって暮らすの?と思うかもしれない。やがて、住まい方を想像すると空間のすべてが成立していることに気づく。広すぎず狭すぎない空間の連続が様々な暮らし方を生み出す。空間の一部が広すぎると圧倒的なリビングとなって固定化されてしまう。住み手がどのような暮らし方をしてくれるか、それは私にも答えは出せません。ただ、住み手に可能性と豊かな発想を与えるきっかけとなればと思っています。
ちなみに私は、階段なんかも居場所になれば良いと思っています。設計者としては、階段の中段に座って見える景色が一番お気に入りです。

君島住み手が自由に居場所を探して暮らしていきフレームを多様化していくのはとても面白い発想ですね。

〈Crossover Talk#03.に続く upcoming!〉

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