バウハウスデザイン横浜市都筑区M邸 バウハウスデザイン横浜市都筑区M邸

BAUHAUS DESIGN 横浜市都筑区M邸 [ 設計:n+archistudio 中村 文典 施工:バウハウスデザイン 所在地:神奈川県横浜市都筑区 ]

難易度の高い敷地条件と向き合う建築家 中村文典

Perspective 中村文典×君島貴史 Feature|Feb.2022

北西の角地、南側へ上がっていくひな壇形状、1階のリビングを選択した家族。設計の難易度が高いプロジェクトだからこそ生まれた設計。建築家中村文典氏は、様々な不利な条件を逆手に取り、家族にとっての最適解を導き出していく。家族も中村氏の提案に呼応し、豊かな暮らしを実践していた。暮らし始めて半年が経ったころ、中村氏は施主を再び訪れ設計を語ってくれた。

editor君島貴史 写真ANDARCHI君島貴史 写真
君島 貴史(きみじま・たかし)1975年東京生まれ。2008年、トレードショーオーガナイザーズ株式会社にて注文住宅の専門展示会「スタイルハウジングEXPO(東京ビッグサイト)」を立ち上げ、住宅購入を検討する施主20000人が来場する住宅イベントを開催。2014年より株式会社バウハウスデザインの常務取締役に就任し、「楽しくなければ家じゃない」をモットーに家づくりに携わっている。株式会社AND ARCHIを設立し、ウェブマガジン「AND ARCHI」の編集に携わっている。
建築家中村文典 写真建築家中村文典 写真
中村 文典(なかむら・ふみのり)/1972年山口県生まれ。1993年 京都科学技術専門学校卒業後ゼネコン設計部での勤務、1996年より設計事務所での勤務を経て、2010年 n+archistudioを設立。バイクや車、キャンプなど多彩な趣味を持ち、自身の趣味の経験や感性を設計に反映している。敷地の特性から設計の糸小口を見出し、住み手のライフスタイルを汲み取る設計手法から生み出される設計は暮らしを心地よくする。

内に開くという回答

設計のプロの会話の中に、「内に開く」という言葉が飛び交う。開くとは、簡単に言うと窓を設置し開放性を確保するということだ。通常、窓の特性としては外に対して開くというのが一般的だが、道路などの公共性の高い方角に窓を大きく配置するとプライバシーの阻害を受けたりする。外側に対し開く窓を中庭などの方向に開き、プライバシーの確保と開放性を同時に獲得する。横浜の住宅街などでは、都市型の立地に対応するために用いられる設計手法。

敷地環境 敷地環境

今回の住まいは、北西角地の敷地条件だった。北西の角地は、自然と設計の難易度が上がる。道路側の光が取り入れやすい方角を素直に開けることができない。東南の方向が隣地に囲まれているため、開放性のある窓を設置しても気持ちの良い光や景観が望めない。この敷地の場合、南側に向けて敷地がひな壇状に高くなっており、さらに採光計画が難しい立地となっている。敷地のポテンシャルを活かすためには、正攻法の設計手法では良い回答にはならない。この条件と真摯に向かい合い設計に取り組んだのが中村氏だった。内に開くという回答は、この住まいの場合はリビングからつながるデッキ空間のこと。この空間が、この住まいの大きなポイントとなる。それについては後に説明しよう。

家族の中でも意見が分かれた


建築家中村文典 写真2 建築家中村文典 写真2

中村氏は、このプロジェクトの結果に大きく影響する条件を確認し始めた。リビングが1階か、それとも2階か?もちろん、採光条件の厳しい立地に対しては、1階のリビングは設計の難易度を上げる要素となる。そんな条件でも、中村氏は2階のリビングに会話を誘導することはなかった。家族の住まい方に真摯に耳を傾け、ベストな回答を導き出そうとしていた。

家族の中でも意見が分かれた。2階でもいいのではないか?いや、老後のことを考えるとやはり1階ではないか?中村氏は焦ることなく、じっくりと家族の議論を待った。しばらくするとリビングは1階にしようという結論に至る。ここからが、中村氏の腕の見せ所となる。

建築家中村文典 写真3 建築家中村文典 写真3

1階がリビングという選択

1階がリビングという選択によって、内側に開くデッキ空間が必要となった。坪庭の中に配置されたデッキは、外からのプライバシーに配慮しながらアウトリビングを楽しむことができる。リビングと同じ高さに作られたデッキは、リビングの広がりを演出し、実際の延べ床面積以上に広さを感じることができる。これを、設計者の中では中間領域といい居住空間の開放性を生み出すのに使われる手法だ。

坪庭のデッキ 坪庭のデッキ

更には、1階をリビングにすることの最大のデメリットである採光の問題を坪庭空間によって解消した。坪庭の内側の壁は、白い壁材で施工し、反射光をリビングに取り入れる機能を持たせた。一日を通じて様々な角度の光がリビングにもたらされることとなる。デッキ空間のルーバー越しは玄関ポーチとなっており、ルーバー越しに差し込む柔らかな光が玄関前を演出する。坪庭に多彩な機能を持たせることによって、デメリットをメリットに変えることとなった。

スタディを重ねる

様々な条件を重ね合わせ建物の配置計画を考える。旦那様の趣味のバイクを玄関ポーチに入れたい。駐車場はできれば2台分。住宅街の角地は、ランドマークとなるためファサードをきれいにしなくてはならない。そして、1階のリビングが閉塞感なく明るい空間としなくてはならない。全てを合理的に解いていかなくては良い回答にならない状況だった。

正面スロープ 正面スロープ

結論は、北側に駐車場を置き建物の配置は南に寄せるという選択。1階のリビングに十分な採光を確保するためには、より難しくなる配置を選択した。明るさを確保するためのポイントはデッキ空間の位置と階段の位置。玄関は北西の角に置き、南側から玄関ポーチまでの距離を取って緩やかなスロープ形状とした。ホンダのクロスカブなら車体の重量も軽いため、ちょっとしたスロープなら登れると判断した。その玄関ポーチの脇にデッキを配置した。

ルーバー越しに見えるデッキ空間は、玄関ポーチに緩やかな開放感と明るさをもたらしてくれる。このデッキ空間の壁は、白のガルバリウムを選択し光の反射のしやすい色を選択。日中、太陽の光を常に反射光としてリビングの中に注ぎ込む光庭の機能を果たしてくれる。そして、階段はリビングを抜けた南側に配置。階段と幅45センチの吹き抜けを合わせた空間を南側に配置した。この空間に大きな掃き出しのサッシを2つ上下に設置。この大開口の窓から光を取り込む計画とした。デッキ空間といううちに開いた設計と階段に吹き抜けをあわせ大きな窓を配置するという2つのアイデアにより1階リビングの採光問題を解決した。

採光 採光

端正なファサード

ファサード夜景 ファサード夜景

閑静な街並みの角地に立つ建築物は、その街並みの雰囲気を決定すると言っても過言ではない。ある意味、責任のある立地とも言える。中村氏は、その角地に対するファサードに気を配った。北側の壁には4つの小窓。小窓ではあるが、内部空間にしっかり機能する窓として配置している。シンプルに、そして一定のリズムで配置された窓が北側のファサードを整える。西側は、玄関と横長スリットの開口部。アクセントとしてレッドシダーの板壁。夜はひときわ幻想的に浮かび上がるデザインとした。

横長スリットの開口部の高さは秀逸な位置に設定。外からはプライバシーを守る高さで、内からは人の目線の高さとし開放感をつくり出している。シンプルなデザインは、外構の植栽のアクセントと調和し、植栽の成長と共に住まいの成長にも感じられ飽きのこない住宅となるのではないかと思う。

ディティールを守る施工品質

ファサード2 ファサード2

バウハウスデザインの施工部は設計者のデザインの再現性を重視する。安全で快適な住まいを施工することは当然こと。設計者の図面を深く読み込み、住まいのコンセプトから理解していく。

内装の仕上げ工事が設計者の意図に反していないか?外観デザインの正面性はどこの面なのか?多角的に読み解き施工の準備をする。正面性の高い外壁に電線に引き込み口や電気メーター、エアコンの配管が設置されないように施工する。ちょっとしたことだが、設計者に信頼される施工で住まいの完成度をさらに上げていく。住宅のブランドとは、細やかな仕事の積み重ねで向上していくものなのだ。

住まいづくりのスタート

M様ご家族 M様ご家族

家族は夫婦と長男、長女の4人家族。子供たちは、今度社会人となる長男と高校受験を控えた長女だった。最初は、夫婦2人で建築の相談に来られていたが、子供たちも一緒に家づくりのプロジェクトを進めてみないかと提案。子供たちを混ぜた家づくりを全く想像していなかったようで、バウハウスデザインからの提案にびっくりしたようだ。住まいづくりは、親から子供への最大のメッセージともなる。一生に一度のプロジェクトだからこそ家族みんなで参加してほしいというのがバウハウスデザインの考え方。「みんなで作った家だから、みんなで楽しく暮らそう!」そうなることを切に願っている。

ライフスタイルにも変化が

緑や雑貨集め、料理がもともと好きな奥様だった。住まいが変わり好きなことに拍車がかかる。暮らしを重ねるごとに緑が成長し増えていく。キッチン周りの装備も拡充していき料理の時間がもっと楽しくなる。自然と家族の食卓が充実し、緑に囲まれながら美味しい料理に舌鼓。家族の会話も今まで以上に増えて豊かな暮らしの時間が増える。旦那様は、もともと趣味で実用性の高いカブ(バイク)を買い替え。クロスカブというもっとかわいいやつになった。中村氏は、M様のライフスタイルの変化に満足げ。設計という仕事が、家族の暮らしに豊かさを添えられたら、、、、設計者としてこんなに嬉しいことはないと語ってくれた。

キッチンの奥様 キッチンの奥様

coverage